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帳場で翻訳アプリを使うときに確かめること

帳場で翻訳アプリを使うときは、利用規約で業務に使ってよいかと入れた言葉の扱いを確かめ、短い文で一つずつ話し、体調やお金のように取り違えられない話は書面で伝えます。この記事では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の VoiceTra の規約と使い方、総務省の令和8年版情報通信白書、個人情報保護委員会の Q&A で確かめたことと、翻訳アプリに任せないほうがよい場面を並べます。特定の製品を勧めるものではありません。
要点
- VoiceTra は NICT の研究用の音声翻訳アプリで、33言語に対応し、無料で使えます。個人の旅行者の試用を想定して作られています。
- 利用規約は、利用を音声翻訳の技術の性能の評価と向上のためとし、組織的で恒常的な利用は制限されることがあります。業務で使えるかについて、公式のページは民間のサービスの利用も検討するよう答えています。
- VoiceTra に入れた音声と文字は NICT のサーバーに記録され、人の手でも使われます。お客様の名前や旅券の番号は入れず、名簿や画面を見せて確かめます。
- 短い文を一つずつ話し、逆翻訳で確かめ、名前と数字は紙や画面で見せます。
- 体調、お金、決まりの話は翻訳アプリに任せず、前もって用意した英語の文で伝えます。
VoiceTraの特徴と使い方
VoiceTra(ボイストラ)は、NICT が公開している音声翻訳のアプリです。話しかけた言葉を外国語に訳し、訳した文をもう一度自分の言葉に訳し直した「逆翻訳」も画面に出すので、意図どおりに伝わったかを見比べられます。
総務省の資料(令和7年6月12日)と VoiceTra のよくある質問によると、使い方は次のとおりです。マイクのボタンを押して端末に向かって話すと、認識した文、訳した文、逆翻訳の文が順に画面に出ます。認識が違うときは、ペンの印を押してキーボードで直せます。相手に話してもらうときは、画面の下にある相手の言語の側を押して入力の向きを切り替え、相手の言語は地球の印から選びます。
公式のページによると、翻訳できる言語は33(中国語の簡体字と繁体字は1つと数える)で、そのうち24の言語で音声の入力ができ、24の言語で訳した文を音声で読み上げます。ダウンロードも利用も無料で、通信料は利用者の負担です。音声の認識と翻訳はインターネットの先のサーバーで行うため、電波の届かない場所では使えません。
公式のページは、VoiceTra を、個人の旅行者が試しに使うことを想定して作られた研究用のアプリで、研究のためのサーバーを使っていると説明しています。総務省の令和8年版情報通信白書も、NICT が個人旅行者の利用を想定した研究用アプリとして提供していると書いています。
業務で使うときの決まり
帳場で使う前に、利用規約で、誰が何のために使えるかを確かめます。VoiceTra の利用規約(2022年11月15日)は、規約に同意した利用者は、音声翻訳の技術の性能の評価と向上のためにのみ VoiceTra を利用できるとしています。ここでいう利用者には、VoiceTra を使う相手、つまり話しかけられたお客様も含まれます。
公式のよくある質問は、業務で使えるかという問いに、試験的に使うことはできるものの、VoiceTra の技術を使った民間のサービスの利用も検討してほしいと答えています。直接的な営利目的での利用はできないとされ、その例に、有償の製品やサービスの中から VoiceTra を呼び出せるようにすることと、販売する機器に VoiceTra を入れて売ることが挙がっています。規約には、組織的で恒常的な利用など、NICT が不適切と判断した場合に、予告なく利用を制限することがあるとも書かれています。
規約は、翻訳の結果の正確さも、いつでも使えることも保証しないとし、重要な事柄の伝達や緊急時の通信に使うことは控えるよう求めています。提供の期間も保証されず、予告なく終わる場合があるとしています。2026年8月10日の NICT のお知らせは、セキュリティ上の問題に対応するために一時停止していたサービスを、修正版のアプリの公開とともに全面的に再開したと伝えています。
帳場で毎日使う道具にするなら、業務で使うことを前提にした製品やサービスを、その規約を読んでから選びます。総務省の白書によると、NICT の多言語翻訳の技術は、技術移転を通じて40を超える民間のサービスに使われ、官公庁のほか、防災、交通、医療などの分野で使われています。
お客様の情報を守る
翻訳アプリに入れた言葉が、どこに送られ、何に使われるかを確かめます。VoiceTra の規約とプライバシーポリシーでは、入力された音声と文字、訳した結果、端末の情報、位置の情報などは、翻訳のたびに NICT のサーバーに送られて記録されます。NICT はそれを技術の改良のために、機械による処理のほか、人の手による選別や音声の書き起こしにも使うため、個人情報やプライバシーを含む情報、営業秘密など、秘密にしておく必要のある情報は入力しないよう求めています。
個人情報保護委員会は、個人情報保護法のガイドラインについての Q&A(令和7年7月1日)で、外部のクラウドサービスを使うことが、本人の同意が要る第三者への提供や、取り扱いの委託に当たるかを取り上げています。判断の基準は、そのサービスを提供する事業者が個人データを取り扱うことになっているかどうかだとしています。
帳場では、お客様の名前、旅券の番号、部屋の番号、カードの番号を翻訳アプリに入れず、宿泊者名簿や予約の画面を見せて確かめます。ほかの翻訳アプリや翻訳機を使うときも、入れた言葉を事業者が保存したり改良に使ったりするか、それを止められるかを、規約とプライバシーポリシーで確かめます。旅券の確認の伝え方は外国人のお客様の旅券の確認と写しにまとめています。
行き違いを減らす使い方
翻訳アプリは、短い文を一つずつ訳すときによく働きます。VoiceTra のよくある質問は、旅行の会話を一文ずつ訳すことを前提にしていて、長い文章や単語だけの翻訳には向かないと書いています。
- 短い文で一つずつ 一度に一つのことだけを話します。訳がおかしいときは、主語を入れるなど言い方を変えて言い直すよう、総務省の資料にあります。
- 逆翻訳を見る 訳した文を自分の言葉に訳し直した文が意図と違えば、言い方を変えてもう一度訳します。
- 口を近づける VoiceTra のよくある質問は、マイクから3センチ以内に口を近づけ、速すぎず遅すぎない速さで話すよう勧めています。
- 名前と数字は見せる 固有名詞は訳せないことがあると、VoiceTra のよくある質問にあります。地名、料理の名前、時刻、金額は紙や画面に書いて見せます。
- はい、いいえで答えられる聞き方 「はい」か「いいえ」、または並べた中から選んで答えられる形で聞くと、聞き違いが減ります。
- 最初の声かけは自分から 総務省の資料は、最初の声かけを自分からすると、翻訳機だと分かってもらえると書いています。
翻訳アプリを使うことを伝える英語を帳場に置いておくと、お客様も話し方を合わせてくれます。
May I use a translation app so that I understand you correctly?
正しく理解できるよう、翻訳アプリを使ってもよろしいでしょうか。
Please speak one short sentence at a time, close to the phone.
短い文を一つずつ、電話に近づけてお話しください。
Could you write it down for me, please?
書いていただけますか。
Please check the time and the amount on this paper.
時刻と金額は、こちらの紙でご確認ください。
書面で伝える場面
体調、お金、決まりのように、取り違えると困る話は、翻訳アプリを補助にとどめ、前もって用意した英語の文で伝えます。VoiceTra の規約も、重要な事柄の伝達や緊急時の通信に使うことは控えるよう求めています。
| 場面 | 翻訳アプリで足りるか | 代わりに用意するもの |
|---|---|---|
| 道案内、近くの店 | 足りることが多い | 地図に印をつけて渡す |
| 館内の設備、風呂の入り方 | 足りることが多い | 客室の英語の案内書き |
| 食事の好み | 補助にとどめる | 着く前の聞き取りの答え |
| 食物アレルギー | 任せない | 着く前に書面で尋ねた答えと、英語の献立 |
| 体調、けが | 任せない | 119 と Japan Visitor Hotline の番号、急病のときの英語の文 |
| 料金、精算の行き違い | 任せない | 英語の明細と、決まりを書いた紙 |
| 館内の決まり、取り消しの条件 | 任せない | 英語の書面 |
食事の制限の尋ね方は着く前の聞き取りの作り方に、決まりの英語は館内の決まりを英語で伝えるに、支払いの英語は支払い方法を英語で案内する書き方にあります。
災害のときも同じです。観光庁の「非常時における訪日外国人旅行者対応のための用語集」(令和3年3月)は、日本で使われている災害の言葉や避難の行動をそのまま翻訳しても、訪日外国人旅行者には災害のときに取るべき行動が分からないことがあると書いています。急病と災害のときの窓口と英語の文は海外のお客様の急病と災害に備えるに、帳場で使う英語の定型文は英語の定型文集にまとめています。
翻訳機やアプリを選ぶとき
帳場の翻訳機や翻訳アプリは、製品の名前より、次の点で比べます。
- 業務で使ってよいか 利用規約が、宿の業務で毎日使うことを認めているか。
- 入れた言葉の扱い 入れた音声や文字を事業者が保存するか、改良に使うか、それを止められるか、消せるか。
- 通信がないとき 電波の届かない場所や、館の Wi-Fi が止まったときにも使えるか。
- 言語 館に来ているお客様の国や地域の言葉に対応しているか。音声で入力できる言語と、文字だけの言語を分けて確かめます。
- 契約の名義 誰の名義で契約し、担当が替わったときに引き継げるか。
どの言葉が要るかは、宿泊者名簿や予約の記録から、多い国と地域を数えて決めます。数え方は館内の表示と案内を多言語にするにもまとめています。帳場で口で伝える短い英語は帳場と客室で使う英語の接客フレーズにあります。
よくある質問
VoiceTraは業務で使えますか
公式のよくある質問は、試験的に使うことはできるものの、VoiceTra の技術を使った民間のサービスの利用も検討してほしいと答えています。利用規約は、利用の目的を音声翻訳の技術の性能の評価と向上に限っていて、組織的で恒常的な利用など不適切と判断された場合は、予告なく利用が制限されることがあります。帳場で毎日使うなら、業務での利用を認めた製品やサービスを、規約で確かめて選びます。
VoiceTraが使えないときはどうすればよいですか
まずアプリを最新の版に更新します。NICT は2026年8月10日に、セキュリティ上の問題を直した ver.9.2.1 を公開し、ver.9.1.3 と ver.9.2.0 では更新を求める画面が出て使えない状態になると案内しています。公式のよくある質問によると、電波の状態が悪いときやサーバーが混んでいるとき、職場などネットワークが管理されている場所でも、つながらないことがあります。
VoiceTraはオフラインで使えますか
VoiceTra は、インターネットにつながった状態で使うアプリです。公式のよくある質問によると、音声の認識と翻訳はクラウドの上で行うため、電波の届かない場所やオフラインでは使えず、音声翻訳1回あたり約100KBの通信が生じます。館内で電波の届きにくい場所で伝えることは、英語の紙にしておきます。
翻訳アプリにお客様の個人情報を入れてもよいですか
お客様の名前や旅券の番号は、翻訳アプリに入れず、名簿や画面を見せて確かめます。VoiceTra の規約は、入力された音声や文字を NICT のサーバーに記録し、人の手による選別や書き起こしにも使うため、個人情報やプライバシーを含む情報は入力しないよう求めています。個人情報保護委員会の Q&A は、外部のサービスの利用が本人の同意の要る第三者への提供などに当たるかは、事業者が個人データを取り扱うことになっているかで判断するとしています。
ホテルのフロントで使う翻訳機はどう選べばよいですか
製品の名前より、規約が業務での利用を認めているか、入れた言葉を事業者が保存したり改良に使ったりするか、通信がないときに使えるか、館に来るお客様の言葉に対応しているかで比べます。総務省の令和8年版情報通信白書によると、NICT の多言語翻訳の技術を使った民間のサービスは40を超えます。体調やお金の話は、どの翻訳機を使う場合も、前もって用意した英語の文で伝えます。
まとめ
帳場で翻訳アプリを使う前に、規約で業務に使ってよいか、入れた言葉がどう扱われるかを確かめます。VoiceTra は個人の旅行者の試用を想定した研究用のアプリで、規約は利用を性能の評価と向上のためとし、重要な事柄の伝達や緊急時の通信に使うことは控えるよう求めています。お客様の名前や旅券の番号は入れず、短い文を一つずつ話して逆翻訳で確かめ、名前と数字は紙や画面で見せます。体調、お金、決まりの話は、前もって用意した英語の文で伝えます。STAYGOコンサルティングでは、書面で伝える場面の英語の文を、貴館の決まりに合わせて英語と日本語でそろえます。
出典と調べ方
十二のページと資料は、記事を書いた2026年10月15日に開いて読み、確かめました。VoiceTra の規約は日本語の原文で読んでいます。机上で調べたもので、NICT、総務省、個人情報保護委員会に問い合わせてはいません。規約の対象を「個人の利用と NICT が認めた実証実験」とする言い方は、読んだ日本語の規約には見つけられなかったため、規約にある言い方で書いています。
- 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)「VoiceTra サポートページ」(33言語、ダウンロードと利用が無料で通信料は利用者の負担、個人の旅行者の試用を想定した研究用アプリであること、民間サービスの検討、2026年8月のサービス再開のお知らせ)
- NICT「VoiceTra 利用規約」(2022年11月15日。Android 版も同じ内容)(性能の評価と向上のためにのみ利用できること、利用者に相手も含むこと、利用者データの記録と人の手による利用、個人情報などを入力しないこと、組織的で恒常的な利用の制限、正確さといつでも使えることを保証しないこと、重要事項の伝達と緊急時の通信に使わないこと、提供期間)
- NICT「VoiceTra ご利用にあたって」(直接的な営利目的では利用できないことと、その例)
- NICT「VoiceTra よくある質問」(業務での利用、相手の言語の側を押して相手から入力すること、旅行の会話を一文ずつ訳す前提、固有名詞、マイクから3センチ以内、オフラインでは使えないこと、1回あたり約100KBの通信、接続できないとき)
- NICT「VoiceTra 特徴」(逆翻訳、33言語、音声の入力24言語と音声の出力24言語、簡体字と繁体字を1言語と数えること)
- NICT「VoiceTra プライバシーポリシー」(取得する情報の項目と、翻訳のたびにサーバーに送られて記録されること)
- NICT「多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」の修正版公開およびサービス再開について」(2026年8月10日)(セキュリティ上の問題への対応、一時停止していたサービスの全面的な再開、ver.9.2.1 の公開と、ver.9.1.3 と ver.9.2.0 への更新の求め)
- NICT「多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」バージョンアップのお願い」(該当する版では更新のお願いが表示され、使えない状態になること、ver.9.2.1 へ更新すること)
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」多言語翻訳技術の高度化に関する研究開発(VoiceTra は個人旅行者の利用を想定した研究用アプリであること、技術移転を通じて40を超える民間サービス、官公庁のほか防災、交通、医療などの分野で使われていること)
- 総務省「多言語翻訳技術(ボイストラ等)の活用について」(令和7年6月12日)(VoiceTra の使い方。マイクのボタン、ペンの印での修正、入力の向きの切り替え、地球の印での言語の選択。うまく使うこつとして、言い方を変える、主語を入れる、最初の声かけを自分からする)
- 個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A」(令和7年7月1日)(Q7-53 クラウドサービスの利用が第三者提供や委託に当たるかは、提供する事業者が個人データを取り扱うことになっているかで判断すること)
- 観光庁「非常時における訪日外国人旅行者対応のための用語集について」(令和3年3月)(災害の言葉や避難の行動をそのまま翻訳しても、取るべき行動が伝わらないことがあること)