湯治は、温泉地に何泊か、あるいはもっと長く泊まり、一日に何度か湯に入って、その合間に休む日本の昔からの過ごし方です。「湯」と「治める」の字を合わせた言葉です。観光庁の解説は、本州の北の農家が農閑期に家族で温泉へ来て何週間も泊まっていたこと、そして明治のころから暮らしが変わるにつれて、その習わしが薄れていったことを伝えています。環境省は2017年から、温泉に入るだけでなく、その土地の自然や歴史、食も楽しむいまの湯治のかたちを「新・湯治」としてすすめています。

この記事では、療養泉とその入り方について国が示していること、そして今も湯治が息づく四つの地、秋田の玉川、鳥取の三朝、別府の鉄輪、栃木の板室をご紹介します。2026年10月31日に、環境省と観光庁、東京都の頁、各温泉や宿の公式の頁、県の頁、雑誌の記事、予約サイト、研究所のコラムを読みました。どの宿にも問い合わせてはいません。体への働きについては、出典が書いているとおりにだけ書いています。温泉の入り方全般については日本の温泉文化:行く前に知っておくこと →をご覧ください。

要点

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いまの湯治

昔の湯治客は、自分で食事を作り、一日に何度も湯に入り、畑の仕事が呼ぶまで泊まっていました。そのための自炊の部屋を今も残している宿があり、温泉の蒸気で料理ができる台所を置いている宿もあります。その一方で、料理はせずに長く泊まりたい方のための宿も増えました。川の見える部屋、部屋まで運ばれる食事、いつでも入れるお風呂、そして何も予定のない一日です。

環境省の「新・湯治」は、2017年7月に、温泉地の活性化を話し合う有識者会議が提言したものです。環境省はこれを、温泉地のまわりの自然や歴史、文化、食を楽しみ、温泉地に滞在することで心と体をリフレッシュする、いまの暮らしに合った温泉地の過ごし方だと説明しています。散歩や土地の食事、町の人との会話も、湯と同じくらい大切な一部です。

療養泉と体について国が示していること

日本で温泉と呼ばれるものは幅広く、決められた成分を一定量以上含むものだけが療養泉とされます。環境省は療養泉を10種類に分け、それぞれがどんな症状に適しているかを定めています。筋肉や関節の慢性的な痛みやこわばり、冷え性、胃腸の働きの低下、疲労回復など、すべての療養泉に共通する一般的な適応症があり、そのうえに泉質ごとの適応症があります。いちばん多い単純温泉には、自律神経不安定症、不眠症、うつ状態が挙げられています。

これらはあくまで適応症で、限りもあります。東京都の保健医療局が公開している国の基準に沿った案内には、熱のある病気の活動期、重い心臓や肺の病気、出血のあるときなど、温泉に入るのを避けるべき禁忌症も並び、酸性泉では皮膚や粘膜の過敏な方も挙げられています。経済産業研究所の上席研究員は2020年のコラムで、温泉の効果には科学的にまだ確かめられていない点が多いと書いています。この記事では、国が公表している一覧をそのまま載せ、私どもからは効き目について何も申し上げません。

入り方の助言は簡潔です。入浴の前にコップ1〜2杯の水を飲むこと。1回の入浴で平均800mLの水分が失われます。のぼせる前に出ること。環境省は、のぼせは熱中症の一種だとしています。酸性泉や硫黄泉のあとは真水で流すこと。東京都の案内は、はじめの数日は1日1〜2回、慣れたら2〜3回まで、1回は3〜10分から、慣れたら15〜20分ほどまで延ばしてよいとしています。また、湯治を始めておよそ3日から1週間のころに、気分がすぐれない、眠れない、肌が荒れるといった「湯あたり」が出ることがあり、そのときは回数を減らすか休むようにと書いています。最後に、携帯電話はしまっておきましょう。環境省は、数日以上温泉地に滞在するとホルモン値や血圧などが正常化してくることが研究で報告されていると書き、1泊2日でも観光より休むことに重きを置けばよいとしています。

秋田の玉川と強酸性の湯

玉川温泉は秋田の十和田八幡平国立公園のぶなの森にあり、自らを「湯治のふるさと」と呼んでいます。宿は、湯を世界でも珍しい塩酸を主成分とするpH1.2の強酸性泉だと説明し、湧出量は日本一だとしています。大浴場は酸に強いといわれる青森ヒバで造られ、源泉100%の浴槽から50%の浴槽、箱蒸し湯、立ち湯まで、11種類の浴槽があります。源泉100%の浴槽は刺激が強いため、ほかより温めにしてあり、飲泉は38倍に薄めて飲むようにと案内しています。大浴場は3時から24時まで入れます。

宿は、お部屋とお食事付きの旅館部と、お部屋のみの自炊部に分かれています。お食事は日替わりのビュッフェです。多くの方が、国立公園の地熱を使った天然の岩盤浴を目当てに訪れ、泊まる方は館内の屋内岩盤浴も使えます。2026年は、自然研究路では宿が貸し出す熊鈴を持ち、なるべく複数で歩き、夜や早朝の外出は控えるよう呼びかけています。2026年10月28日に初雪が降り、11月中旬からはバスの時刻も変わるので、冬の滞在には車と、山の道に慣れた運転手が欠かせません。

三朝と三たびの朝

鳥取の中部、山あいの三朝はラドンの湯で知られ、観光協会は世界屈指の放射能泉だとしています。三朝は「三たび朝」と書き、観光協会は三たび朝を迎えると元気になるといわれていると紹介しています。町には、850年あまり前に白い狼が湯のありかを示したという伝説が残っています。

2015年に、三徳山と三朝温泉は「六根清浄と六感治癒の地」として日本遺産に認定されました。鳥取県の頁は、断崖の三徳山を参って六根を清め、三朝の湯治で六感を癒すという物語を伝えています。環境省は放射能泉の適応症として、痛風、関節リウマチ、強直性脊椎炎などを挙げています。町の案内には、湯に浸かるだけでなく、飲み、吸うという入り方も紹介され、飲泉場やラドン熱気浴、鉱泥湿布もあります。

別府で、黒い岩と木々に囲まれた青緑色の源泉の池から立ちのぼる濃い湯けむり

鉄輪と別府の湯けむり

別府の鉄輪では、通りのあちこちから湯けむりが上がり、その蒸気で料理をする宿も多くあります。市営の「鉄輪むし湯」は、鎌倉時代の1276年に一遍上人が開いたと伝わり、受付の前には上人の木像があります。1メートル四方の木戸をくぐると約8畳の石室があり、温泉で温められた床に、清流沿いにしか育たない薬草の石菖が敷きつめられ、その上に横になります。詩人の野口雨情は、むし湯の帰りに肌に石菖の香りが残ると詠みました。2026年10月1日から2027年1月31日までは7時30分から19時30分まで(受付は19時まで)で、男女それぞれ4名ずつ入れます。

鉄輪には、今も蒸気で自炊する湯治宿があります。雑誌『Discover Japan』の2024年2月号は、保養の温泉宿の特集で湯治柳屋を取り上げ、明治から続く湯治宿で、地獄蒸しの台所を中心に、湯治用の簡素な和室から書斎付きの部屋まであり、源泉は約99.6℃だと紹介しています。

板室で静かに過ごす湯治

栃木の那須連山のふもとにある板室は、古くから「下野の薬湯」として親しまれてきました。1551年創業の大黒屋は「保養とアートの宿」を名乗っています。湯は40℃前後のアルカリ性単純泉の源泉掛け流しで、宿は「温泉にゆっくりつかって欲しいから、ぬるめです」と書いています。お風呂は那珂川に面し、予約サイト一休の掲載では、夜通し入ることができ、午前中の清掃の間も三つのうちどれかには入れるとされています。庭と倉庫美術館には美術家の菅木志雄の作品があり、展示は一年を通して替わります。

一休の掲載では、東京からおよそ2時間、東北新幹線の那須塩原駅からタクシーで30分です。北へ遠く行かずに湯治のリズムを味わいたい方には、四つのうちでいちばん近い地です。

温泉町の川辺にある、屋根付きで木の腰掛けのある屋外の足湯

湯治の一週間

一日は、朝食の前、川に湯けむりがまだかかっているうちのお風呂から始まります。それから散歩です。三朝なら川辺の湯と古い路地、鉄輪なら湯けむりの通り、板室なら川沿いに美術館まで。昼は軽く。午後は昼寝をして、本を読み、もう一度お風呂へ。夕食は部屋に運ばれます。最後のお風呂は遅く、短めに。

一週間のうちに、日々はこの流れに落ち着いていきます。二つの地を組み合わせ、それぞれに3〜4泊し、そのあいだは車で移って、荷物を持たずに済むようにする方が多くいらっしゃいます。寒い季節の玉川のような山の湯には、道に慣れた運転手が必要です。三朝と鉄輪は、どの季節も列車と車で行きやすい地です。

STAYGOにできること

湯治の滞在では、宿、何泊もするのに合うお風呂とお食事の部屋、地から地への車と運転手、そして町での静かな日々を手配します。地元の案内人との散歩、三徳山への参拝、板室の美術館などです。着いたときには、長く泊まるための部屋が整い、お風呂の時間も分かり、夕食はお伝えいただいたとおりになっています。持病についてお聞かせいただいた場合は、まず主治医にご相談いただくようお願いし、宿にできることを伺います。手配はすべてお客様のお名前で行い、宿や運転手、案内人へのお支払いは、それぞれの料金のまま直接お支払いいただきます。私どもの手数料や上乗せはありません。旅は7〜14日の Signature、より長い旅や込み入った旅は Bespoke でお手伝いします。

出典と確かめ方

2026年10月31日に次の頁を読みました。定義と歴史、体についての案内は環境省と観光庁、国の入浴の基準は東京都、時間やお風呂、決まりごとは各温泉、宿、市の公式の頁、日本遺産の物語は県の頁、背景は雑誌と予約サイトと研究所のコラムです。どの宿にも問い合わせてはいません。

よくあるご質問

湯治とは何ですか

温泉地に何泊か、あるいはもっと長く泊まり、湯に入って体を休める日本の過ごし方です。観光庁の解説は、東北の農家が農閑期に家族で温泉に長く泊まっていたことを紹介しています。いまは環境省が、温泉地の自然や歴史、食も楽しむ「新・湯治」をすすめています。

日本の温泉には公式の適応症がありますか

療養泉の基準を満たす温泉にはあります。環境省は療養泉を10種類に分け、それぞれに適した症状(適応症)を定めています。あくまで適応症で、温泉に入ってはいけない状態(禁忌症)も定められているので、持病のある方は湯治の前に主治医にご相談ください。

湯治には何泊必要ですか

決まった日数はありません。環境省は、数日以上温泉地に滞在すると体調が回復し、ホルモン値や血圧などが正常化してくることが研究で報告されていると書き、1泊2日でも観光より休むことに重きを置けばよいとしています。いまは3泊から7泊ほどの方が多くいらっしゃいます。

日本語が話せなくても湯治はできますか

準備をすればできます。この記事の宿や施設は、お風呂や時間、決まりごとを日本語で、一部は英語でも案内しています。入り方の作法はほかの温泉と同じで、お風呂の順は宿の方が教えてくださいます。

上質な旅館で湯治をすることはできますか

できます。玉川のように自炊の部屋が今も残る宿がある一方で、板室の大黒屋のように、アートや川の眺めがあり、夜通しお風呂に入れる宿もあります。日々をどう過ごしたいかで宿を選びます。

湯治の滞在をご相談ください

何泊できるか、どんなふうに休みたいかをお知らせください。長く泊まるための部屋、お風呂、お食事について宿に聞き、確かめられたことをお返しします。

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