「旅館」という言葉が指す幅は、とても広いものです。片方の端には京都の俵屋があります。各国の要人が泊まり、一泊の値段は東京のたいていのホテルのスイートを超えます。もう片方の端には、駅の近くの安い宿があります。同じ言葉を使っていますが、中身は共有していません。旅館に泊まってみたい、というところまでは、ほとんどの方が分かっています。ただ、予約の前に格を見分けられる方はごく少ない。そしてその見分けが、滞在の質のほとんどすべてを決めています。
ここでは、その幅を正直に分解します。それぞれの格が何を出すのか、決定的な差はどこにあるのか、そして STAYGO がどういう考え方で、お客様の旅の形に合う宿を選んでいるのか。
旅館とは実際に何か
旅館は、もてなしの型が決まっている日本の宿です。夕方に着くと玄関で迎えられ、畳の部屋へ通されます。浴衣と足袋が用意してあります。お茶と和菓子が出ます。夕食の前に湯へ入ります。大浴場か、宿にあれば客室の風呂です。夕食は会席、季節の品を順に出す食事で、部屋付きの仲居が運ぶ宿もあれば、食事処で供する宿もあります。翌朝の朝食も同じ作法で進みます。チェックアウトはたいてい11時より前です。
欧米のホテルでいう設備の話ではありません。フィットネスもラウンジのバーもなく、ミニバーが無いことも多い。要は、風呂と、食事と、静けさと、人の目配りです。上位の宿では、その目配りが欧米のラグジュアリーホテルよりずっと近く、ずっと途切れません。これがおもてなし、頼まれる前に動くもてなしです。
中心にあるのは温泉です。日本は地球でもっとも地熱の活発な地域のひとつに載っていて、湯の成分も温度も土地によってかなり違います。硫黄の強い箱根の湯は、城崎温泉のやわらかいアルカリ泉とも、九州・別府の鉄分の多い湯とも質が違います。旅館を選ぶことの半分は、どの湯に浸かるかを選ぶことです。
「良い旅館の一泊と、忘れられない一泊を分けるのは二つだけです。会席の質と、風呂が自分たちだけのものかどうか。」
ティア1:日本で最上の旅館
ティア1は、建物、料理、湯、人の手の厚さ、そして歴史が重なって、ほかとは別の枠に入ってしまった宿です。数は多くありません。何か月も前から埋まります。料金は一泊二食で、一人あたり10万円から30万円以上です。
日本でもっとも有名な旅館で、おそらく世界でもそうです。俵屋は1709年から京都の中心で続き、同じ一族が六代にわたって守ってきました。18室はそれぞれ専用の庭に向けて別々に設計され、三世紀のあいだ各国の元首やノーベル賞受賞者を泊めてきました。スティーブ・ジョブズもここに泊まっています。俵屋の会席は、文句なしに日本最上の食事のひとつです。建物は低く、木造で、飾り気がありません。払っているのは、部屋の細部、鉄瓶の湯の温度、季節の花の活け方です。予約は数か月前からで、粘りが要ります。STAYGO はこの宿と実際のつながりを持っています。
俵屋が旅館の古典だとすれば、べにや無何有はその現代形です。金沢に近い山中温泉にあり、意匠は現代のもの。木立の斜面に低く建ち、18室すべてが自分のテラスに客室露天風呂を持っています。厨房は金沢の加賀料理の流れで、その水準を崩しません。共同浴場が一切ないので、刺青の可否という話がそもそも出てきません。客に対する人手の厚さは日本でも指折りです。旅館に懐疑的な方を変えてしまうのは、この宿です。
強羅花壇は箱根の伏見宮家の別邸跡に建ち、庭はかつて宮家に仕えたのと同じ執拗さで手入れされています。形は伝統的な旅館のまま。スイートごとに専用の温泉風呂があり、部屋は庭か、森の斜面に向いています。厨房は箱根の成分の濃い湯を出発点にして会席を組みます。箱根の山の景色と火山の地形がすぐそこにあります。一度では足りません。季節ごとに別の宿になるからです。
あさばは、伊豆半島の修善寺で450年以上ものあいだ人が籠もってきた場所に建っています。今の建物は低く、伝統的で、竹林と、静かな池へ張り出した能舞台を囲むように並びます。夜によっては、泊まり客のために能が演じられます。浴舎はそれ自体が見るべき建築で、湯は修善寺の古い泉から引いています。あさばは大きく宣伝をせず、質のわりに海外では知られていません。おかげで、同じ水準の滞在でありながら俵屋やべにや無何有より静かです。
ティア2:優れているが伝説ではない
ティア2は幅の広い帯です。歴史の重み、部屋数の少なさ、料理の突出という点では最上位に届かないものの、旅館として本当に質の高い滞在を出す宿がここに入ります。箱根、京都の郊外、奈良、城崎温泉、有馬温泉の優れた宿の多くがこの帯です。料金は一泊二食で一人4万円から10万円あたりです。
ティア2が出すもの。手堅いものからかなり良いものまでの会席(良い会席と別格の会席の差は大きく、ティア2はよく作られた季節の献立を出しますが、最上位のような作り手の際立ちまでは届きません)。大浴場と並んでいくつかの客室風呂。周りの景色や街へ無理なく出られる立地。そして、ティア1の圧倒されるような密着まではいかないものの、行き届いた人手です。
旅館が初めての方、旅の主役ではなく長い日程の一部としての一泊、そして大浴場の賑わいが本当に好きな方には、ティア2が合います。ティア2に問題があるわけではありません。天井の高さが違う、別の枠だというだけです。
スタンダード:私たちが取らない帯
スタンダードの帯、一人一泊1万5千円から4万円の宿は、主に国内旅行と団体客のためにあります。食事はたいてい決まった献立で、質より数をさばくために整えられています。風呂は共同で、繁忙期には混みます。部屋は畳敷きではあっても、洗練よりも施設という感じになりがちです。人手も薄い。
STAYGO はスタンダードの旅館をお客様に勧めません。質の高い旅館の滞在とは中身が違いすぎて、旅館という形そのものを誤解させてしまう危険があるからです。先にスタンダードに泊まり、あとでティア1に泊まった方は、その差に驚きます。順番が逆なら、スタンダードの宿は後を続けられません。
選ぶときに見るところ
客室露天風呂、つまり部屋に付いている、あるいはその部屋の客だけが使える屋外の温泉風呂は、旅館選びでいちばん効く一点です。雪の降る真夜中に、好きなだけ、ほかに誰もいない湯に入れるということです。全室に客室露天風呂がある宿(べにや無何有、強羅花壇)は、スイートだけに付く宿や大浴場しかない宿とは、はっきり別のものです。
部屋の種類も大きく効きます。多くの旅館には、標準の和室から、複数の間と専用の庭と部屋付きの仲居が付くスイートまで幅があります。良い宿のいちばん良い部屋は、同じ宿の標準の部屋より格段に上です。STAYGO はお客様に代わって予約するとき、常にその時点で取れる最上の部屋を押さえます。値は張りますが、旅館の予約の中で払う価値がいちばん高い差はここです。
湯の質は本当の差なのに、予約サイトはほぼ無視しています。日本の温泉は場所で大きく変わります。硫黄泉(箱根、登別)、アルカリ泉(城崎、白浜)、炭酸水素泉(有馬の金泉)、鉄分の多い湯(有馬の銀泉、別府)。肌に良い湯もあれば、薬効の言い伝えが強い湯もあります。その宿が載っている湯は、その宿を作っているものの一部です。どんな湯に浸かることになるのかは、予約の前に聞いていい質問です。
客と人手の比は正面から書かれることが少ないものの、部屋数と価格帯から読めます。高い価格帯で20室に満たない宿は、ほぼ必ず「自分のために人がいる」と感じる比になります。40室を超えると、旅館という名前にかかわらずホテルの作りに近づきます。
刺青の扱い
伝統的な旅館の多くは、見える刺青のある方が共同の浴場を使うことを今も断っています。この決まりには日本の歴史的な背景があり、刺青は長く反社会的勢力と結び付けて見られてきました。運用は宿によってまちまちで、都市部の宿や若い従業員のあいだでは受け止め方が少しずつ変わっていますが、古くからの宿では規定として残っています。
刺青のある方への実際の解は単純です。共同浴場の代わりに客室風呂があるのではなく、客室風呂しかない宿を選ぶこと。べにや無何有、強羅花壇をはじめ、ティア1やティア2の上のほうの宿の多くは客室風呂だけで運営しているので、共同浴場の決まりを気にする場面がありません。STAYGO は、この点が関わるとお知らせいただいたお客様については、宿を選ぶ段階で刺青の扱いを確認します。
STAYGO はどう旅館を選ぶか
STAYGO の選び方は、宿の候補表からではなく、お客様から始まります。誰もいない午前3時に露天の湯へ入りたい方と、朝に人が連れ立って大浴場へ向かう、あの光景ごと味わいたい方とでは、合う宿が違います。どちらの好みも間違っていません。宿のほうを人に合わせます。
宿が決まったら、STAYGO はその時点で取れる最上の部屋を押さえます。標準の部屋でもなければ、何も考えずいちばん高い部屋でもなく、お客様がその空間をどう使うかに合う部屋です。強羅花壇の庭付きスイートと、同じ強羅花壇の標準の部屋は、別の滞在です。食事の制約も、到着のかなり前に厨房へ伝えます。会席は季節と板前の構想で組まれますが、上位の宿は、間に合う時期に伝えれば重い制約にも応じます。
最後に、日程に旅館を何泊入れるかもご一緒に決めます。正しい宿に、旅の正しい位置で一泊するほうが、深く考えずに選んだ宿に三泊するよりずっと価値があります。日本の旅程では、旅館の夜がいちばん記憶に残ります。どこに置くかは、決めるに値します。
「旅館は、畳を敷いたホテルではありません。客を預かるやり方であり、やっている人以上には良くなりません。」二週間の日程のどこに旅館を置くかは別の話で、そしてそこが効きます。