抹茶のふるさとは、京都の南、かつて山城と呼ばれた丘陵の地です。ここでは約800年にわたってお茶が作られてきました。文化庁は2015年にこの茶の里を日本遺産に認定し、抹茶、煎茶、玉露という日本を代表する三つのお茶を生み出した地としています。2025年から2026年にかけて、抹茶は日本でもっとも求められる輸出品のひとつになり、供給が追いつかない状態が続いています。
この記事では、抹茶の育て方と挽き方、いま品薄になっている理由、そして産地で抹茶にふれられる場所、川沿いの宇治の老舗の茶屋と和束の山の茶畑をご紹介します。2026年10月31日に、文化庁、京都府、大阪税関、宇治市観光協会、各茶屋と農園の公式の頁、ロイター通信の記事、日本食糧新聞の記事を読みました。どの茶屋にも問い合わせてはいません。出典は最後にまとめています。茶道としてのお茶については京都のプライベート茶会、その流れを順に →をご覧ください。
要点
- 京都府の茶業研究所によると、抹茶の原料のてん茶は、約20日以上覆いをかけてから摘み、揉まずに乾燥させたお茶です。
- ロイター通信は、2024年の猛暑で収量が落ちたあと、2025年5月の京都のてん茶の入札で1kgあたり8,235円という過去最高の値が付いたと報じました。大阪税関の集計では、2025年1月から10月の粉末状の緑茶の輸出は6,889トンです。
- 宇治では、市営茶室の対鳳庵で薄茶を1,500円でいただけ、上林三入では石臼で抹茶を挽く体験がお菓子付きで1,650円です。
- 和束では、おぶぶが英語の抹茶工場と茶畑のツアーを、最大5名、2時間、1名30,000円で行っています。
抹茶ができるまで
抹茶づくりは、摘む何週間も前、茶畑に覆いをかけるところから始まります。京都府の茶業研究所は、抹茶になる葉、てん茶を、約20日以上覆いをかけて遮光してから摘み、蒸して乾燥させたものと説明しています。大阪税関の2025年12月の特集は次の段階を加えています。てん茶は揉まずに乾燥させ、茶臼などで細かな粉に挽きます。ほかの茶葉を粉にしたものは粉末茶と呼ばれ、抹茶になるのはてん茶だけです。
覆いの歴史は古いものです。文化庁によると、16世紀、宇治では千利休ら茶人の求めに応えて、葦で編んだ簀を茶畑にかけ、渋みを抑えて色の濃い茶葉を育てるようになりました。宇治の白川では、今も天然の葦を使った本簀の栽培が続いているそうです。その年の最初の葉を摘むのは5月で、京都府の茶業研究所は2022年、5月2日から23日にかけて一番茶期の摘採を行っています。
京都南部の800年
日本遺産の物語は、宇治茶の始まりを13世紀に置きます。明恵上人が宇治の里人に茶の植え方を教えたと伝わります。15世紀には足利将軍家に重んじられ、のちに織田信長、豊臣秀吉、徳川将軍家の庇護を受けました。18世紀には、宇治田原町湯屋谷の永谷宗円が、蒸して手で揉む製法を考え出して煎茶が生まれ、さらに覆いの栽培とこの製法を合わせて玉露が生まれました。
物語は景色に残っています。煎茶の需要が増えると、和束の山あいでは農家が斜面を切り開き、等高線に沿って茶の畝を作りました。こうしてできた山なりの茶畑が、石寺の茶畑をはじめ、日本遺産の構成文化財になっています。宇治橋のたもとでは、文化庁が日本最古の茶屋といわれると紹介する通圓で、今も24代目当主のお茶をいただけます。
いま抹茶が品薄な理由
ロイター通信は2025年7月、宇治から、記録的な暑さで抹茶の生産が抑えられる一方、海外の需要が急増していると伝えました。京都は日本のてん茶の約4分の1を生産しており、2024年夏の猛暑で4月から5月の収穫が弱かったそうです。6代目の農家は、例年2トンのところ1.5トンだったと話しています。生産者の団体 Japanese Tea Production Association によると、2024年のてん茶の生産は5,336トンで、10年前の約2.7倍でした。また Global Japanese Tea Association によると、2025年5月の京都の入札は1kgあたり8,235円で、前の年より170%高い値でした。記事の中の茶商は、新しい茶畑が供給を和らげるまで約5年かかると話しています。
輸出の数字も同じ流れを示しています。大阪税関によると、2024年の緑茶の輸出は8,798トン、364億円で、どちらも過去最高でした。2025年1月から10月には、抹茶を含む粉末状の緑茶が緑茶の輸出額の8割を超え、前の年の同じ時期の約2倍の割合になりました。日本食糧新聞は2026年6月、2025年の緑茶の輸出額が約721億円と過去最高を更新し、静岡では2024年から煎茶からてん茶への転換が急に進んでいると報じています。旅をする方にとっては、その年のお茶を味わういちばん素直な方法は、育った場所でいただくことです。
宇治の川沿いの茶屋
宇治は宇治川沿いの小さな町で、片側に平等院、その参道に茶商が並びます。市営茶室の対鳳庵は、平等院の鳳凰堂に向かい合って建てられたことからその名が付きました。宇治市観光協会の案内では、季節のお菓子を添えた薄茶が1,500円で、当日の受付もでき、一席は10名までです。抹茶のお点前体験は3,600円で、3日前までの予約が必要です。京都府の案内では、開席は10時から16時(最終受付15時30分)で、毎月末日と12月21日から1月9日は休席です。
平等院の表参道では、江戸時代初めから幕府や大名の茶の御用を務めた上林三入が、三階の茶室で、宇治の抹茶を石臼で挽き、自分で点てていただく体験を用意しています。料金はお菓子付きで1名1,650円(税込)、お一人だけの場合や当日の予約は2,200円で、電話での予約が必要です。宇治茶資料室には、大名からの書状や茶壺、宇治石の石臼が並びます。朝霧橋のたもとの福寿園宇治茶工房では、10時から17時まで、お茶の手もみや石臼での抹茶づくりを体験でき、宇治茶道場 匠の館では11時からお茶の淹れ方を教えています(水曜定休)。この二つの料金は、京都府の案内では問い合わせとなっています。
和束の山の茶畑
和束は南東の山あいの町で、茶の畝が斜面の等高線に沿って続いています。茶農家が営むおぶぶは、英語のツアーを二つ行っています。抹茶工場と茶畑のツアーは、決まった日に一日2回、2時間で、10歳以上の最大5名まで、1名30,000円(税込)です。茶畑でお茶をいただき、白衣を着て石臼で挽く部屋を見学し、7種類のお茶を味わいます。もう一つのガイド付きのツアーは最大18名で、茶畑と煎茶の工場、昼食、9種類のお茶の試飲が付きます。2026年12月1日からは、30日以上前の手配で19,800円、73時間前までは22,000円、それ以降は27,500円です。
宇治の近くでは、丸久小山園の槇島工場で、英語版もある抹茶のビデオを見たあと、工場と茶室を見学し、挽きたての抹茶を試飲して、自分で点てることもできます。京都府の案内では、見学は月曜、火曜、木曜、金曜の10時と13時30分、2名から10名までです。
訪ねる時期
5月は一番茶の季節で、覆いのかかった茶畑と、いちばん明るい緑の和束の茶畑が見られます。茶屋もこの時期がいちばんにぎわいます。大阪税関の2025年12月の特集は、もっと静かな季節にも触れています。春のお茶を詰めた茶壺の封を11月ごろに切る「口切の茶事」という習わしがあり、11月から12月が抹茶のいちばんおいしい季節とされるそうです。おぶぶは2026年、京都駅から3月9日から6月14日と10月1日から11月30日に直行のバスを出しています。それ以外の時期は、車がいちばん楽に和束へ行けます。
京都から過ごす静かな一日
朝食のあと、車は京都を出て南へ向かいます。宇治では、平等院に向かい合う対鳳庵で一服目をいただき、参道をゆっくり歩いて、石臼の前で一時間ほど過ごします。お昼は川のそばで。午後は和束の山へ上がり、静かな茶畑で、農家の方がその年の収穫の話をしながらお茶を淹れてくださいます。帰りに宇治田原の永谷宗円の生家に立ち寄り、夕方には京都へ。車にはその日に挽いた抹茶の缶があります。
STAYGOにできること
茶の里で過ごす一日には、京都のホテルからの車と運転手、茶室の席、石臼の時間、農園のツアーと昼食を手配し、茶屋の方が話さない言葉は案内人がおつなぎします。それぞれの茶屋にいちばん静かな時間を伺い、すでに埋まっている日は、そのまま正直にお伝えします。着いたときにはお茶碗の用意が整い、一日はお伝えいただいた速さで進みます。手配はすべてお客様のお名前で行い、茶屋や農園、運転手、案内人へのお支払いは、それぞれの料金のまま直接お支払いいただきます。私どもの手数料や上乗せはありません。旅は7〜14日の Signature、より長い旅や込み入った旅は Bespoke でお手伝いします。
出典と確かめ方
2026年10月31日に次の頁を読みました。歴史と栽培と時間は文化庁と京都府、輸出の数字は大阪税関、料金と日程は宇治市観光協会と各茶屋、農園の公式の頁、市場の動きはロイター通信と日本食糧新聞です。どの茶屋や農園にも問い合わせてはいません。
- 文化庁 日本遺産「日本茶800年の歴史散歩」:明恵上人、葦簀の覆下栽培、永谷宗円、和束の山なり茶園、通圓
- 京都府 茶業研究所 試験研究業務月報 2019年5月:てん茶は約20日以上の被覆
- 京都府 茶業研究所 試験研究業務月報 2022年5月:5月2日〜23日の一番茶期の摘採
- 大阪税関「緑茶の輸出」2025年12月:輸出の過去最高、粉末状の緑茶の割合、抹茶の定義、口切
- ロイター通信「猛暑の日本の抹茶、急増する世界の需要に追いつけず」2025年7月(英語):京都の割合、2024年の猛暑、てん茶の生産量、2025年5月の入札価格
- 日本食糧新聞「全国緑茶特集」2026年6月:2025年の輸出額、煎茶からてん茶への転換
- 京都府「お茶の体験」(京都やましろ観光):対鳳庵、上林三入、福寿園、匠の館、丸久小山園の時間と連絡先
- 宇治市観光協会「対鳳庵」:お茶の品書き、料金、予約の決まり
- 三星園 上林三入本店「抹茶づくり体験」:石臼、料金、取消料
- おぶぶ「Matcha Factory & Tea Farm Tour」(英語):時間、人数、年齢、言葉、料金
- おぶぶ「Guided Tea Tour」(英語):一日の流れ、人数、2026年12月1日からの料金、直行バスの期間
よくあるご質問
抹茶とほかの緑茶の違いは何ですか
抹茶は、覆いをかけて育てた茶葉を蒸して揉まずに乾燥させた「てん茶」を、石臼などで細かく挽いたものです。大阪税関の2025年12月の緑茶輸出の特集も、まさにこの点で抹茶とほかの粉末茶を分けています。
日本で抹茶は品薄なのですか
需給は締まっています。ロイター通信は2025年7月、2024年の猛暑で京都の収穫が減る一方、海外の需要が伸び続け、2025年5月の京都の入札で過去最高の値が付いたと報じました。大阪税関によると、粉末状の緑茶の輸出は2025年も増え続けています。
宇治の茶畑を訪ねるのに良い時期はいつですか
一番茶を摘むのは5月で、茶畑がいちばん青々とする時期です。大阪税関の特集は、11月ごろに茶壺の封を切る「口切の茶事」にも触れ、11月から12月が茶の湯の抹茶がいちばんおいしいとされる季節だと紹介しています。
抹茶を挽くところを見られますか
見られます。宇治のいくつかの茶屋が石臼挽きの体験を用意しており、和束のおぶぶでは英語で2時間の抹茶工場と茶畑のツアーを行っています。多くは事前の予約が必要で、料金や日は各店が決めています。
宇治は京都からどのくらいですか
宇治は京都の中心から列車で南へ少しの距離で、和束はさらに南東の山あいにあります。車であれば、一日でゆっくり両方を巡れます。
茶の里で過ごす一日をご相談ください
京都に滞在される日程をお知らせください。石臼の前や茶畑で静かに過ごせる時間について茶屋や農園に聞き、確かめられたことをお返しします。
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