日本の家や店には、縁起物と呼ばれる福を呼ぶ品がいくつかあり、その多くは季節と結びついています。一年中置かれているのは招き猫です。左手を挙げた猫は人を招き、右手を挙げた猫は福を招くといわれます。東京の豪徳寺は、殿様を手招きした猫の話を伝えていて、右手を挙げた寺の猫を500円から10,000円で授けています。松の門松、わらのしめ飾り、二段に重ねた鏡餅は12月の終わりに飾られ、1月の前半に片付けられます。その日は地域によって違います。矢の形の破魔矢はお正月、竹の熊手は11月の酉の市、ガラスの風鈴は夏のものです。

この記事では、そうした品を7つ取り上げ、それぞれに込められた願い、出回る時期、作られる場所や手に入る場所、持ち帰りやすいかどうかをまとめます。工芸と季節の習わしとして紹介しますので、信仰にかかわらず、どなたでも楽しんだり持ち帰ったりできます。事実はすべて、2026年10月22日に、寺社、市区の役所、農林水産省、観光庁の公式の頁で確かめました。出典は最後にまとめています。この記事は、日本の習わしを紹介する STAYGO の5本の記事のひとつです。ほかにだるま、お守り、酉の市、行事の暦の記事があります。

要点


手招きする猫 招き猫

招き猫は、座って片方の前足を挙げた猫です。手のひらを下に向けて指を動かす、日本で人を呼ぶ時のしぐさをまねています。愛知県の常滑についての観光庁の多言語解説文は、よく見る招き猫を白・黒・茶の三毛猫で、もう片方の足に小判を抱えた姿と説明しています。左手を挙げた猫は人を招くとされ、そのため客を呼びたい店に好まれます。右手を挙げた猫は福と金運をもたらすとされます。同じ解説文は、招き猫の起こりははっきりしないとも書いています。

東京には、始まりを伝える場所が二つあります。世田谷の豪徳寺は、鷹狩りの帰りに門前を通りかかった彦根藩主の井伊直孝を、門前の猫が手招きしたと伝えています。直孝が立ち寄ると雷雨になり、雨をしのぎながら和尚との話を楽しんだそうです。寺は直孝の支援で寛永10年(1633年)に再興したとしていて、福を招いたこの猫を「招福猫児(まねきねこ)」と呼んでいます。豪徳寺の招福猫児は右手を挙げ、小判を持っていません。寺はその理由を、招福猫児は人を招いて縁をもたらすけれど、福そのものを与えるわけではなく、縁を生かせるかどうかはその人次第で、感謝の気持ちがあれば福は自然と訪れるという教えからだと説明しています。奉納所には招福猫児がずらりと並んでいます。寺によると奉納の決まりは特になく、願いがかなった後に納める方が多いそうです。拝観時間は6時から17時までです。寺は、猫の置物に落書きをしないよう呼びかけています。

浅草駅から歩いて約15分の今戸神社は、16世紀から焼かれていた今戸焼の地にあります。台東区の観光サイトによると、ここで猫の焼き物が売られていたことから招き猫発祥の地ともされ、縁結びの神社としても知られています。絵馬には一対の猫が描かれています。社務所の受付は9時から16時までです。台東区の文化財の頁によると、今戸焼は江戸時代から明治時代を中心に今戸やその周辺で作られ、売られてきました。今も区内でただ一人の今戸焼の職人が、お母様とともに約80種の人形や縁起物を作っています。招き猫を含む今戸人形は、土を型に入れて形を作り、焼いてから色を付けます。

工芸として見るなら常滑です。観光庁の解説文によると、常滑では1930年代の終わりに招き猫を作り始め、1950年には国内一の産地になりました。駅の近くの「とこなめ招き猫通り」には、常滑にゆかりのある作家による今風の招き猫39体が並びます。近くでは、左手を挙げた大きな猫の顔「とこにゃん」が壁の上からのぞいています。高さ3.8メートル、幅6.3メートルです。

年の変わり目の破魔矢と熊手

年の変わり目に寺社で受け、家に飾る縁起物が二つあります。破魔矢は矢の形をした縁起物です。観光庁の解説文は、破魔矢を災いをはらい福を招くとされるもので、元日に神社を訪れる人に人気があると説明しています。鎌倉の鶴岡八幡宮に伝わる国宝の弓と矢の解説文では、その矢が破魔矢の起こりといわれているとしています。破魔矢はお正月に多くの神社で授けられ、形や初穂料は神社によって違います。

熊手は、福をかき集める竹の熊手で、11月の酉の日に開かれる酉の市で売られます。浅草の鷲神社は、酉の市が江戸時代から毎年11月に2回か3回開かれてきたこと、境内の熊手店では縁起の良い飾りの付いた熊手が売られることを紹介しています。2026年は11月7日(土)と11月19日(木)で、どちらも午前0時から24時まで行われます。神社では、熊手店とは別に、熊手御守(かっこめ)を授けています。酉の市については酉の市の記事でくわしく紹介しています。

暗い木の軒下、しめ縄から下がる白い紙垂

門松としめ飾りと鏡餅

日本の家のお正月を彩る三つの飾りは、どれも新しい年の神様、年神様にかかわるものです。国立国会図書館のレファレンス協同データベースにある横浜市中央図書館の回答は、日本文化の事典を引いて、門口に立てる松と竹の門松を、年神様を迎える依り代と説明しています。しめ飾りは戸口に掛けるわらの飾りで、長野県飯田市は、注連縄を神聖な区域であることを示すものと説明しています。鏡餅は年神様へのお供えです。農林水産省は、鏡餅をお供えする風習は室町時代から始まったといわれるとし、飾りの一つひとつの意味を紹介しています。二段の丸餅は太陽と月を、上にのせる橙は家が代々栄えることを、裏白は長寿を表します。

飾る日と片付ける日は、地域や家によって違います。二つの市区の記録を見ると、その幅がよく分かります。飯田市の正月行事の記録では、12月の終わりに松や竹を採りに行き、1月7日に正月飾りを火で焼き、1月11日に鏡開きをして、2月1日に門松の杭を抜きます。東京の葛飾区の区史では、三が日が終わると門松を抜いたと記されています。農林水産省によると鏡開きは1月11日で、お供えしていた鏡餅を下ろし、無病息災を願っていただきます。お供えに刃物を向けるのは縁起が悪いとして包丁は使わずに木で叩いて割り、「割る」も縁起が悪いので「開く」と言います。

旅の方にとっては、買うより眺めて楽しむ季節です。葛飾区の区史には、門松にする松を年の市や街角の露店で求めたとあります。お正月に日本にいらっしゃるなら、1月の最初の週に、戸口に掛かるしめ飾りを探してみてください。

それぞれの品が出回る時期と、確かめた公式の出典
品時期確かめた先
招き猫一年中豪徳寺、台東区、観光庁
破魔矢お正月観光庁(鶴岡八幡宮)
門松としめ飾り12月の終わりから1月の前半(地域で異なる)飯田市、葛飾区
鏡餅お正月、鏡開きは1月11日農林水産省
熊手11月の酉の市の日浅草 鷲神社(2026年は11月7日と19日)
風鈴夏川崎大師(2026年は7月17日〜21日)、江戸川区
緑の葉の下に、短冊を付けたガラスの風鈴が何列も下がる

夏の音 風鈴

風鈴は、風に揺れて鳴る小さな鈴です。観光庁の解説文は、その音を夏の暑さの中で涼やかに響くものと書いています。作り手の二つの例と、ひとつの市を紹介します。

江戸風鈴は東京のガラスの風鈴です。江戸川区は、1915年(大正4年)11月創業の篠原風鈴本舗を、宙吹きを得意とする伝統工芸の工房として紹介していて、工房見学と小売ができるとしています。東京都の東京手みやげの頁によると、型を使わず空中で膨らませる宙吹きで、すべて手作業で作られ、音を良くするために鳴り口をあえてギザギザのままにしているため、形も音色も一つひとつ違います。小丸は2,090円です。

岩手の南部鉄器には、鉄の風鈴があります。観光庁の解説文によると、この地域では今も鉄瓶や鍋とともに、風鈴なども手作りされています。

いろいろな風鈴を一度に見るなら、東京と横浜のあいだにある川崎大師の風鈴市です。毎年7月に開かれ、2026年は7月17日から21日まで、10時から17時まで(20日のみ19時まで)、境内の特設会場で行われました。全国各地から風鈴が集まり、神奈川県観光協会によると約800種類にのぼります。川崎大師には、だるまの形をした厄除だるま風鈴もあります。

だるまと七福神

願いをかけて片目を入れ、かなったらもう片方の目を入れる赤いだるまは、旅の方からいちばんよく聞かれる縁起物です。だるまには別の記事があります。だるまの目の意味と、どこで買うかをご覧ください。

七福神は、縁起物の人形や絵によく描かれます。観光庁の解説文は、商売繁盛の恵比寿、農業の大黒天、魔除けの毘沙門天、美と芸能の弁財天、知恵と長寿の福禄寿、健康と長寿の寿老人、幸せの布袋を挙げ、七柱がひとまとまりとして語られるようになったのは室町時代だとしています。神社に奉納する絵馬にもよく描かれるそうです。浅草では、今戸神社が浅草名所七福神のひとつで、台東区によると福禄寿をまつっています。

持ち帰るときに

ほとんどの品は、ていねいに包めば旅の荷物になります。作り手や寺社の頁から言えることを挙げます。

豪徳寺は、旅行会社やガイドと提携した公認のガイドツアーは行っていないこと、境内での営利目的のガイド、撮影、催しなどは事前に寺に相談してほしいことを知らせています。東京と京都での買い物全般は買い物の記事を、寺社での作法は日本の作法の記事をご覧ください。

STAYGO がお手伝いすること

STAYGO は東京を拠点に、日本各地のプライベートな旅を組み立てています。ここで紹介した品に惹かれたら、どれが気になるか、いつ旅をするかをお知らせください。見学を受け入れている工房で職人と過ごす時間や、人の少ない時間に市や境内を歩くことなど、何ができるかを先方に尋ねます。工房や先方の承諾をいただくまでは、お約束はしません。拝観や案内については、それぞれの寺社の決まりに従います。手配はお客様のお名前で行い、お支払いは工房、ホテル、案内の方へ、それぞれの料金で直接していただきます。私たちの手数料や上乗せはありません。旅は Signature プランで、より長い旅や込み入った旅は Bespoke として組み立てます。

出典と調べ方

下に挙げた公式の頁を、2026年10月22日に読みました。寺社、工房、役所には問い合わせておらず、ブログ、ガイドブック、予約サイト、報道の数字は使っていません。日付と値段は2026年10月22日の時点のもので、変わることがあります。2026年と書いた日付は、その年だけのものです。

よくあるご質問

招き猫の左手と右手は何が違いますか

観光庁の解説文によると、左手を挙げた猫は人を招くとされ、そのため店に好まれます。右手を挙げた猫は福と金運をもたらすとされます。東京の豪徳寺は、右手を挙げた招福猫児を、人との縁を招くもので、感謝の気持ちがあれば福は自然と訪れると説明しています。

東京で招き猫はどこで手に入りますか

世田谷の豪徳寺が、寺務所で招福猫児を500円から10,000円で授けています。受付は8時から15時までで、大きさによっては品切れのこともあります。浅草に近い今戸神社も招き猫発祥の地とされ、台東区では今も職人が招き猫を含む今戸人形を作っています。

門松や鏡餅はいつ飾りいつ片付けますか

12月の終わりに飾り、1月の前半に片付けます。日取りは地域や家によって違います。農林水産省によると鏡開きは1月11日で、鏡餅を木で叩いて開き、いただきます。

川崎大師の風鈴市はいつですか

毎年7月に境内で開かれます。2026年は7月17日から21日まで、10時から17時まで(20日は19時まで)行われ、全国から約800種類の風鈴が集まりました。

縁起物を買うのに信仰は必要ですか

いいえ。江戸風鈴や常滑の招き猫のように、作り手や店で買える工芸品も多くあります。寺社では、豪徳寺が猫の置物に落書きをしないよう呼びかけているように、それぞれの決まりに従ってください。

気になる工芸や季節をお聞かせください

どの品に惹かれたか、いつ旅をするかをお知らせください。職人と過ごす時間や、落ち着いた時間に市を歩くことなど、何ができるかを工房や先方に尋ね、そのお返事をお伝えします。

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