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高付加価値旅行者とは何か

海外の富裕層のお客様の話をすると、国の資料では「高付加価値旅行者」という言葉がよく出てきます。観光庁と日本政府観光局(JNTO)は、1回の訪日旅行で1人が日本国内で100万円以上を使う旅行を高付加価値旅行と呼び、地方へ迎える取り組みを進めています。この記事では、言葉の定義と、2023年の推計の数字、国の取り組みを確かめたうえで、旅館・ホテルが先に整えておくことをまとめます。
要点
- 高付加価値旅行は、1回の訪日旅行で旅行者1人が日本国内で100万円以上を使う旅行です。国際航空券の代金は含まず、宿泊、移動、食事、体験を合わせた旅全体の額です。
- JNTOの推計では、2023年の訪日の高付加価値旅行者は59.0万人、消費額は1.0兆円で、訪日旅行者の約2%が消費額の約19%を占めました。
- 観光庁は14のモデル観光地を選び、上質で地域のストーリーを感じられる宿が欠かせないとしています。
- 宿が先に整えるのは、貴館に泊まる理由と部屋と食事の具体を英語で読める形にし、旅を組む人に渡せる1枚と返事の窓口を用意することです。
国の定義
JNTOは、高付加価値旅行を、1回の訪日旅行で旅行者1人が日本国内で100万円以上を消費する旅行と定義しています。この額に国際航空券の代金は含みません。あわせて、地域の伝統や文化、自然に触れることで自身の知識を深め、インスピレーションを得ることを重視する旅行であるとも説明しています。
100万円は、旅全体で使う額です。宿泊のほかに、国内の移動、食事、ガイド、体験、買い物が入ります。宿はその旅の一部を受け持ちます。
観光庁は、いわゆる富裕層ともいうべき旅行者として、この言葉を使っています。
数字で見る
JNTOは2025年6月11日に、クレジットカードの決済データなどをもとに推計した、2023年の市場の大きさを発表しました。
- 旅行者数 2023年の訪日の高付加価値旅行者は59.0万人で、2019年より83.2%増えました。訪日外客数に占める割合は、2019年の1.0%から2.4%になりました。
- 消費額 2023年の消費額は1.0兆円で、2019年より50.6%増えました。訪日外国人の旅行消費額全体に占める割合は、2019年の14.0%から19.1%になりました。
- 国と地域 消費額の多い順に中国(23.0%)、米国(16.3%)、台湾(13.1%)でした。旅行者数も中国(24.6%)、米国(16.5%)、台湾(12.7%)の順です。
- 世界との比べ 同じ年の世界の高付加価値旅行者は1,157万人、消費額は21兆円と推計されています。
観光庁はこの数字を、訪日旅行者の約2%が消費額の約19%を占める、とまとめています。そのうえで、大都市圏が大半を占め、地方での消費が少ないことを課題に挙げています。
国の取り組み
観光庁は、高付加価値旅行者を地方へ迎えるために、集中して支援するモデル観光地を選んでいます。2023年3月28日に11地域、2024年9月27日に3地域を加え、あわせて14地域です。具体的な事業の公募は、各モデル観光地の実施主体が行います。
観光庁の手引書は、観光地づくりに要るものを、地域の魅力(ウリ)、宿(ヤド)、人材(ヒト)、つながり(コネ)、移動(アシ)の五つに分けています。宿については、ハード・ソフトともに上質で、地域のストーリーを感じられる宿泊施設が欠かせない一方、地方ではそうした宿が足りないと書いています。
JNTOは2023年4月に高付加価値旅行推進室を設け、海外の旅行会社との商談会や、日本への招請に取り組んでいます。
旅を組むのは誰か
旅全体で100万円以上を使う旅は、本人が一つずつ予約するとは限りません。海外の旅行アドバイザーや旅行会社が、お客様の希望を聞いて宿と移動と体験を組み合わせることがよくあります。その場合、宿のページや資料を先に読むのは、お客様より先に旅を組む人です。
JNTOの担当者は、米国のお客様は東京・京都・大阪を巡る旅程に地方を1〜2地域加えることが多く、欧州のお客様はおおむね2週間滞在し、地方を含めて広く巡る傾向があると話しています。貴館は、その長い旅の中の何泊かを任される宿として選ばれます。
旅を組む人が宿をどう選ぶかは、海外の富裕層のお客様が宿を選ぶまでにまとめています。
宿が先に整えること
高付加価値旅行者を迎える準備は、新しい設備を足すことから始めなくてもかまいません。旅を組む人が迷わず勧められるように、今の貴館の良さを英語で読める形にするところから始めます。
- この宿に泊まる理由 建物の歴史、土地の食材、湯、庭、主人の考え方など、貴館でしか過ごせない時間を、英語の短い文で書きます。
- 部屋と食事の具体 広さ、寝具、眺め、風呂、夕食の時刻、食事の制限にどこまで応じられるか。書き方は海外のお客様に伝わる客室の説明にあります。
- 転送できる1枚 部屋、食事、行き方、決まり、料金を1枚にまとめ、旅を組む人がお客様へそのまま送れる形にします。作り方は旅行アドバイザーに渡す1枚の作り方にあります。
- 返事の窓口 英語の問い合わせを館の共通のアドレスで受け、誰がいつまでに返すかを決めます。
言葉の体制
JNTOの担当者は、地域のすべての方が流暢な外国語を話す必要はなく、必要な場面で適切な言語対応ができる体制を整えることが、高付加価値旅行者を迎えるうえでの世界共通のスタンダードだと話しています。
宿で言えば、予約の前に読まれる英語の情報、問い合わせへの返事、到着の前の聞き取り、館内の決まりの案内が、英語で確かに伝わることです。帳場で使う言い回しは帳場と客室で使う英語の接客フレーズに、着く前の聞き取りは着く前の聞き取りの作り方にまとめています。
よくある質問
1泊いくら以上の宿なら高付加価値旅行者が泊まりますか
国の定義は、1回の訪日旅行で旅行者1人が日本国内で使う額が100万円以上であることです。この額は、宿泊、移動、食事、ガイド、体験などを合わせた旅全体の額です。宿の料金よりも、旅の中で貴館に泊まる理由が伝わるかどうかを先に見ます。
モデル観光地に入っていない地域の宿には関係がありませんか
モデル観光地は、国が集中して支援する地域として選ばれたものです。お客様の旅は、モデル観光地の外の土地も含めて組まれます。行き方、部屋、食事、決まりが英語で読めて、問い合わせに確かに返せる宿であれば、どの地域でも旅の候補に入ります。
どの国や地域のお客様が多いのですか
日本政府観光局(JNTO)の推計では、2023年の訪日の高付加価値旅行者の消費額は、中国、米国、台湾の順に多く、旅行者数も同じ順でした。今の貴館のお客様の国籍とあわせて見ると、どの言葉の情報から整えるかを決めやすくなります。
全員が英語を話せないと迎えられませんか
JNTOの担当者は、地域のすべての方が流暢な外国語を話す必要はなく、必要な場面で適切な言語対応ができる体制を整えることが大切だと話しています。予約の前に読まれる文と、問い合わせへの返事と、到着の前の確認が英語で整っていれば、館内で一から説明する場面は減ります。
まとめ
高付加価値旅行者は、1回の訪日旅行で1人が日本国内で100万円以上を使う旅行者で、2023年の推計では訪日旅行者の約2%が消費額の約19%を占めました。国は地方へ迎える取り組みを進めていて、上質で地域のストーリーを感じられる宿が要るとしています。宿が先に整えるのは、貴館に泊まる理由と、部屋と食事の具体を英語で読める形にし、旅を組む人に渡せる1枚と、返事の窓口を用意することです。STAYGOコンサルティングの無料の簡易見立てでは、公式サイトと予約サイトを旅行アドバイザーの目線で拝見し、優先して直したい3点をお伝えします。
出典と調べ方
四つの頁と資料は、記事を書いた2026年10月6日に開いて読み、数字と言い回しを確かめました。机上で調べたもので、観光庁とJNTOに問い合わせてはいません。
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日の高付加価値旅行市場は消費額・旅行者数ともに大幅増加」(2025年6月11日)(2023年の旅行者数と消費額、2019年との比べ、市場別の割合、世界の推計、推計の方法。数字は同じ頁の発表資料 PDF で確かめた)
- 観光庁「訪日旅行での高付加価値旅行者の誘致促進」(約2%と約19%、大都市圏に偏ること、モデル観光地の選定日、公募は各モデル観光地の実施主体が行うこと)
- 観光庁「地方における高付加価値旅行者向け宿泊施設の開発に向けた手引書」(令和7年3月)(ウリ・ヤド・ヒト・コネ・アシ、上質で地域のストーリーを感じられる宿泊施設、地方で不足していること)
- 日本政府観光局(JNTO)「高付加価値旅行を地域にどう呼び込むか?市場動向とJNTOの取り組みから考える誘致・受け入れのポイント」(2026年8月18日)(定義と国際航空券を除くこと、高付加価値旅行推進室の設置、米国と欧州の旅程の傾向、言語対応の体制)