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ムスリムのお客様を迎える

東京のモスクの丸天井の模様

ムスリムのお客様を迎えるとき、宿が最初に迷うのは、どこまで対応すればよいかです。観光庁が令和6年4月に出したガイドは、イスラムの教えの解釈や実践の仕方は宗派や国、地域、文化、個人によって違い、ムスリムのお客様への対応に世界で統一された基準はないと書いています。大切なのは、宿ができることとできないことを伝え、お客様が自分で選べるようにすることです。この記事では、そのガイドで確かめたハラールの基本、食事、礼拝、アルコール、お風呂とラマダーンへの配慮を、旅館・ホテルの目線でまとめます。

要点

  • 観光庁のガイドによると、ムスリムのお客様への対応に世界統一の基準はありません。できることとできないことを伝え、お客様が選べるようにします。
  • 食事で避けるのは、豚と豚に由来するもの、アルコール(みりんを含む)、ハラールでない肉です。ハラール認証は必須とされておらず、日本に来るムスリムで認証まで求める人は少ないとされています。
  • 対応している中身を方針として英語で示します。できないことも同じ調子で書きます。
  • 礼拝は1日5回、キブラに向かって行います。客室のキブラの表示や礼拝用マットの貸し出しは、歓迎の気持ちが伝わります。
  • 大浴場を避ける傾向があるので貸切風呂を案内し、ラマダーンの間は夜明け前の朝食と日没後の夕食に配慮します。

ハラールの基本

観光庁のガイドによると、イスラムの教えでは、許されたものを「ハラール」、禁じられたものを「ハラム」と呼びます。ムスリムのお客様を迎えるうえで、まず押さえておくのは、このハラールとハラムの考え方と、毎日5回の礼拝の二つです。

  • 豚と豚に由来するもの 豚肉だけでなく、内臓、皮、豚に由来する成分も避けます。ガイドは、ベーコンやソーセージ、豚骨のスープ、ラード、乳化剤、ショートニング、ゼラチン、コラーゲンなどを例に挙げています。
  • アルコール 酔うお酒を口にすることは避けるべきとされ、多くのムスリムはみりんを含めてお酒を口にしません。醤油などの調味料に含まれるわずかなアルコールも口にしない人がいます。
  • と畜の方法 イスラムの定める方法で処理された肉(ハラール肉)以外は避けるべきとされています。
  • 食べられるもの 野菜や果物など土の中のものと、卵や牛乳など生きている動物からとれるものは、食べることが許されています。

食事の対応の度合い

観光庁のガイドは、食事の対応を四つの度合いに分けています。必ずしもハラール認証を目指す必要はなく、できる限りの対応をしたうえで、その中身を伝えることが大切だとしています。

  • ハラール認証の取得 ハラールの品だけを扱い、台所や調理器具、食器を専用にするなどして、第三者の機関から認証を受けます。ガイドは、日本へ旅行に来るムスリムで認証まで求める人は少ないと書いています。
  • ムスリムフレンドリー 部分的に対応する形です。例として、食材はすべてムスリム向けにし、調理器具と食器は専用にしつつ、アルコールは販売する形が挙がっています。
  • ノーポーク・ノーアルコール 豚と豚に由来するもの、アルコールとアルコールを含むものを除きます。
  • 情報の開示 対応できるかどうかを、お客様が判断できるように伝えます。

旅館の会席では、みりんや酒、醤油が多くの料理に使われます。ガイドの献立の例では、みりんの代わりにてんさい糖などの糖類を、醤油はアルコールを加えていないものを使っています。魚介の出汁は、ムスリム向けの欄にもそのまま残っています。どこまで替えられるかを板場と決め、決めたことを書いておきます。食事の制限の聞き方は、ベジタリアンとヴィーガンのお客様の食事にもまとめています。

対応を書いて伝える

観光庁のガイドは、ムスリムのお客様の教えの守り方は人によって違うので、対応している内容を方針として示すことが大切だと書いています。示す項目の例は、使っている食材と使っていない食材、認証の有無、専用の調理場や調理器具の有無、対応する献立、専用の食器の有無です。

We can prepare a pork-free and alcohol-free dinner on request. Mirin and sake are replaced with sugar, and we use soy sauce with no added alcohol.

ご希望により、豚とアルコールを使わない夕食をご用意できます。みりんと酒は砂糖に替え、アルコールを加えていない醤油を使います。

Our kitchen is not halal-certified, and the same kitchen is used for other meals. Halal meat is not available, so we serve fish and vegetables instead.

当館の調理場はハラール認証を受けておらず、ほかのお料理と同じ調理場を使っています。ハラールのお肉はご用意できないため、魚と野菜のお料理をお出しします。

Please let us know your dietary needs at least 7 days before your arrival.

食事のご希望は、ご到着の7日前までにお知らせください。

日数はどれも例です。できないことも、同じ調子ではっきり書きます。お客様はそれを読んで、自分で選べます。

礼拝の場所と向き

観光庁のガイドによると、礼拝は夜明け前、昼、午後、日没時、夜の1日5回、1回5分ほど行います。時刻は日の出や日没など太陽の動きで決まります。礼拝は清潔な場所で行い、手洗いのような場所では行いません。礼拝の前には手や足などを水で清め、サウジアラビアのマッカにあるカーバ神殿の方角(キブラ)に向かい、額をつけるので礼拝用のマットを使うのが一般的です。

宿の客室はプライベートな空間で、多くのお客様は礼拝に要るものを持参したり、スマートフォンで調べたりするため、宿での礼拝のための対応を求める声は高くないとガイドは書いています。それでも、客室にキブラを示したり、帳場で礼拝用のマットを貸したりすると、歓迎の気持ちが伝わってうれしいという声があるそうです。足を洗うと洗面所が濡れることがあるので、モップなどを用意しておくとよいともあります。

A prayer mat is available at the front desk. The direction of Mecca (qibla) is marked on the ceiling of your room.

礼拝用のマットはフロントでお貸ししています。マッカの方角(キブラ)は、お部屋の天井に表示しています。

If you would like a quiet place to pray outside your room, please ask our staff.

お部屋の外で静かに礼拝できる場所をご希望の際は、係にお申し付けください。

アルコールと食事の場所

館でお酒を出していても、ムスリムのお客様を迎えることはできます。ガイドは、ムスリム向けでない料理や飲酒の様子が見えないよう、個室を使ったり、店の一部を仕切ったりしてほしいという声があり、豚の料理を出す店やビュッフェで特に求められると書いています。

夕食を部屋で出す宿なら、そのことを伝えるだけで安心されることがあります。食事処で出すなら、個室や仕切りを使えるかを書きます。部屋の冷蔵庫の飲み物にお酒が入っているなら、片づけておけるかを尋ねます。

お風呂とほかの配慮

観光庁のガイドは、食事と礼拝のほかに、次のことにも気をつけるよう書いています。

  • お風呂 家族以外に素肌を見せることを嫌うムスリムが多く、男女とも大浴場を避ける傾向があります。貸切風呂を案内できるとよいとされています。案内の書き方はお風呂とタトゥーの決まりを英語で書くにあります。
  • 異性の接客 相手から求められる前に握手をするのは避けます。客室に入るときなど、個室で男女が二人になる場面に気をつけます。
  • 犬 犬を不浄とする教えがあり、触れることを嫌がる人がいます。宗派によって違います。
  • ラマダーン 年に一度、夜明け前から日の入りまで断食する、約30日の月があります。イスラム暦は1年が354日で、西暦では毎年約11日ずつ早まります。旅をするムスリムは少ないものの、旅の中で断食する人もいるので、朝食を夜明け前に、夕食を日没後にとれるようにすると喜ばれます。
  • 門限 宗教として決まった門限は、基本的にないとガイドのQ&Aにあります。

ラマダーンの時期を知る手がかりとして、シンガポール人材開発省の祝日表では、ラマダーン明けの祝日(Hari Raya Puasa)が2026年は3月21日、2027年は3月10日です。

よくある質問

ハラール認証を取らないとムスリムのお客様は泊まれませんか

観光庁のガイドは、認証を取った方が安心してもらえるとしたうえで、認証まで求めるかどうかはお客様ごとに違い、必須ではないと書いています。日本へ旅行に来るムスリムで認証まで求める人は少ないとも書かれています。できることを行い、その中身を伝えることが大切です。

館でお酒を出していても迎えられますか

観光庁のガイドは、食材はすべてムスリム向けにしながらアルコールは販売する形を、部分的にムスリムに対応する「ムスリムフレンドリー」の一例に挙げています。ほかのお客様の飲酒や、ムスリム向けでない料理が目に入らない席を望む声もあるので、個室や仕切りを使えるかを伝えます。

消毒用のアルコールは使ってもよいですか

観光庁のガイドのQ&Aでは、消毒用や工業用のアルコールは問題ないとしています。ただし、ガイドは、エタノールや調味料に含まれるわずかなアルコールを避けるべきかについては意見が分かれるとも書いています。

まとめ

観光庁のガイドは、ムスリムのお客様への対応に世界で統一された基準はなく、宿ができることとできないことを伝え、お客様自身が選べるようにすることが大切だと書いています。食事は、豚と豚に由来するもの、アルコール、ハラールでない肉を避けることが基本で、認証を取らなくても、できる範囲の対応とその中身を示せば迎えられます。礼拝はキブラの表示やマットの貸し出し、お風呂は貸切風呂の案内、ラマダーンには食事の時刻の配慮ができます。決めたことは英語で書き、予約の前に読める場所に置きます。STAYGOコンサルティングの実装では、貴館の板場と決めた対応を、英語と日本語の方針の文にそろえます。

出典と調べ方

三つの頁と資料は、記事を書いた2026年10月7日に開いて読み、確かめました。ガイドは、載せているのは基本的な内容で、すべての方に当てはまるわけではないと断っています。机上で調べたもので、観光庁や認証機関に問い合わせてはいません。

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