東京の6月から9月の平均相対湿度は74〜76%です(気象庁、1991〜2020年の平年値)。東京都は、カビが好む湿度を70%以上としています。閉め切った住まいを乾いた状態に保つには、除湿機やエアコンの除湿運転をタイマーで動かし、押し入れや戸棚を開けておき、家具を外壁から離し、浴室を乾かしておきます。そのうえで、滞在と滞在のあいだに風を通して様子を見てくれる人を手配しておきましょう。

閉め切った部屋に、東京の一年がもたらすもの
気象庁による東京都心の月別平年値(1991〜2020年)を見ると、その傾向ははっきりしています。平均相対湿度は1月と2月が51〜52%ほどで、そこから上がっていきます。5月は68%、6月は75%、7月は76%、8月は74%、9月は75%となり、11月には64%まで下がります。7月と8月の平均気温は25.7℃と26.9℃です。
東京都の「健康・快適居住環境の指針」では、カビが好む条件を、温度がおよそ20〜35℃、湿度が70%以上としています。栄養となるのは皮脂や石けんかす、壁紙ののり、結露などです。同じ指針は、室内の湿度の目安を40〜60%としています。つまり、6月から9月にかけて換気をしていない東京の部屋は、この条件にほぼそのまま当てはまります。
東京都の調査(2016年度)では、33.7%の世帯が過去3年のうちに自宅でカビを見たと答えています。そのうち79.7%が浴室を挙げ、押し入れ、洗面所、寝室もそれぞれ20%を超えました。まず気を配りたいのは、こうした場所です。
木、畳、和紙、漆、それぞれに必要なこと
無垢の木は湿気を吸ったり吐いたりするため、湿度の高い夏には膨らみ、冬の乾いた空気や暖房で乾くと縮みます。日本の気候に合わせて作られた家具は、たいてい継ぎ手や板の納まりでこの動きを見込んでいます。乾いた気候向けに作られた家具ではそうとは限らず、3月にはなめらかに動いた引き出しが、8月には引っかかることもあります。
畳は、東京都の指針がカビの生えやすい場所として挙げているもののひとつです。カビが出たときは、消毒用アルコールを吹きつけ、アルコールを含ませたブラシで畳の目に沿ってこすり、拭き取ってからよく乾かすよう勧めています。和紙のシェードは紙ですので、結露しやすい窓から離し、出発前にほこりを払っておきます。
漆には別の弱点があります。輪島漆芸美術館によると、漆は紫外線で劣化するため、漆の品を長いあいだ直射日光の当たる場所に置かないほうがよいとされています。カーテンを開けたままの留守宅では、日の当たるサイドボードに置いたお盆が、数年で色あせることがあります。
留守がちの住まいに合う家具の選び方
ぬくもりのあるミニマルな設えは、年に数回過ごす住まいに向いています。理由は実用的なもので、物が少なければほこりのたまる面も、湿った空気がよどむ閉じた隅も少なくなります。選ぶときには、次のような点で大きな差が出ます。
- ソファ、ベッド、キャビネットは脚のあるものを選び、下に空気が通るようにします。床にじかに置いたベッドの台は、湿気をため込みます。
- 結露が起きやすい外壁と家具のあいだは、数センチあけておきます。
- 作り手に手入れを相談できる天然オイルや漆の仕上げを選び、品ごとに手入れの説明書きをもらっておきます。
- 張り地は取り外して洗えるもの、マットレスは立てかけたり風を通したりできるものにします。
- 寝具やリネンの収納には、物を詰め込んだ閉じた戸棚よりも、オープン棚やすき間のある扉が向いています。
出発前の短いチェックリスト
大切な作業のほとんどは、滞在の最後の1時間に集まっています。濡れたもの、閉じきったもの、押しつけ合ったものを何も残さないことが目標です。
- 浴室の換気扇を回し、浴槽は空にして拭き上げ、乾かしておきます。間取りが許せば、扉も開けておきます。
- 押し入れ、クローゼット、戸棚の扉を少し開けておきます。布団や寝具は押し入れから出すか、通気性のあるカバーに入れて収納します。
- エアコンの除湿運転か除湿機をタイマーで動かします。除湿機を使う場合は、連続排水できるものか、タンクが満水になると安全に止まるものを選びます。
- 窓枠とサッシ下の水抜きの溝を拭いておきます。東京都の指針も、結露水が外へ流れるようこの溝をふさがないよう勧めています。
- 日の当たる窓のカーテンやブラインドを閉め、漆や布、木を紫外線から守ります。
留守のあいだ、住まいを見てくれる人
日本の分譲マンションでは、管理組合が契約する管理会社が、外壁や廊下、エレベーターなどの共用部分を管理しています。各住戸の中までは、ふつう見てくれません。そのため所有者の多くは、日本にいる親族や知人に頼むか、有料の空き家巡回サービスに、窓を開けて水を流し、写真付きで報告してもらっています。
国土交通省の外国人区分所有者向けパンフレット(2026年3月)では、新しい選択肢が説明されています。2026年4月から、日本国外に住む所有者は、日本に住所のある国内管理人を選任し、総会での議決権の行使や管理費の支払いを代わりに任せられるようになりました。この役割が担うのは建物に対する所有者の務めで、住まいの中を見ることとは別のものです。それぞれについて書面で取り決めておきましょう。
どなたに来てもらう場合も、短い依頼リストを渡しておくと安心です。しばらく窓を開ける、蛇口と浴室の換気扇を動かす、押し入れとベッドの裏を確かめる、黒ずんだところやかび臭いところがあれば写真に撮る、といった内容です。
戻ったときに確かめたいサイン
扉を開けたときのかび臭さが、最初のサインです。続いて、東京都の調査で挙がった場所を確かめます。浴室の天井と目地、押し入れ、洗面所、寝室、それにマットレスの裏や、外壁に接した家具の背面です。
硬い面の小さな点であれば、たいてい掃除で落とせます。東京都の指針は、窓を開け、ゴム手袋とマスクをつけ、カビに掃除機を直接当てないよう勧めています。胞子を広げてしまうためです。また、家庭用のカビ取り剤の多くは塩素系で、酸性の洗剤と決して混ぜてはいけないと注意しています。カビが壁の中まで広がっていたり、同じ場所に何度も出たりする場合は、管理会社に相談してください。建物そのものの漏水や結露が原因かもしれません。
STAYGO ATELIER にできること
STAYGO ATELIER は、こうした条件を踏まえて、東京の住まいに合う家具や照明、工芸品を選びます。脚のある形、湿気に合う仕上げ、作り手が手入れの方法を示している品です。注文と配送の手配を行い、品ごとの手入れの説明書きをお渡しします。住まいの換気や掃除、中の点検は、ご自身か、ご自身が頼んだ方にお任せしています。
よくいただく質問
無垢の家具は、東京の湿気で反りますか
無垢の木は湿度に応じて動きます。東京の平均湿度は、冬のおよそ51%から7月の76%まで変わります。この動きを見込んで作られ、外壁や直射日光から離して置かれた家具であれば、たいていうまくなじみます。どのように作られ、仕上げられたかは作り手に聞いてみてください。
留守のあいだ、除湿機をつけたままにしておくべきですか
6月から9月にかけては、エアコンの除湿運転や除湿機をタイマーで動かす所有者が多くいます。連続排水できるものか、満水で止まるものを選び、住まいを見てくれる人に動いているかを確かめてもらいましょう。
マンションの管理会社は、部屋の中まで見てくれますか
ふつうは見てくれません。管理会社が管理組合のために見るのは共用部分です。住戸の中については、親族や知人、または空き家巡回サービスを手配しておきましょう。
留守宅の畳はどうなりますか
畳は、東京都がカビの生えやすい場所として挙げているもののひとつです。部屋の換気を保ち、夏のあいだはラグで覆わないようにします。カビが出たら消毒用アルコールで手入れし、よく乾かしてください。
出典
- Japan Meteorological Agency, monthly climate normals for Tokyo (1991–2020) (2021)
- Tokyo Metropolitan Government, Bureau of Public Health, Guidelines for a healthy and comfortable home: No.9 Indoor mould (includes fiscal 2016 survey) (2016)
- Tokyo Metropolitan Government, Bureau of Public Health, Guidelines for a healthy and comfortable home: 17 areas and 37 guidelines (n.d.)
- Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, For Foreign Building Unit Owners: Condominium Management in Japan (2026)
- Wajima Museum of Urushi Art, Urushi: The Underlying Culture of Japanese People (Google Arts & Culture) (n.d.)


