日本でいちばん語られる二つの季節は、取り替えのきくものではありません。桜も紅葉も何百万人もの人を引き寄せ、どちらも本当に美しく、そしてどちらにも、航空券を一枚取る前に考えておくべき現実的な事情があります。
これは順位づけではなく、比較です。どちらが良い季節かは、あなたが誰で、日本の旅に何を求めるかで決まります。
桜の季節は、日本でもっとも象徴的な眺めの一つであり、うまく運ぶのがもっとも難しい旅でもあります。どの土地でも満開は5日から10日ほど。一週間ずれれば、裸の枝か、散ったあとの花びらを見ることになります。開花は冬の気温によって毎年数日動くので、正確な日付は開花の6〜8週間前まで確定しません。
春の天気は変わりやすいものです。3月下旬の夜は10°Cを下回ることもあり、雨も珍しくありません。有名な花見の光景も、寒く曇った午後には違って見えます。京都の円山公園や東京の千鳥ヶ淵など、もっとも写真に撮られる場所は、見頃の日には何千人もの人に囲まれます。
宿も飲食店も文化体験も、日本の一年でもっとも競争の激しい予約期間です。花見の名所に近い旅館は、繁忙期の料金を設定し、連泊を条件にすることがよくあります。おまかせのカウンターや懐石の店は数か月前に埋まります。早い計画がいちばん報われ、遅い判断がいちばん高くつく季節です。
紅葉は、もっとゆっくりした、間違いの許される季節です。色づきは10月中旬に北海道で始まり、6週間ほどかけて本州を南下し、11月下旬に京都や大阪に届きます。だから本当の意味で融通がききます。ある場所が過ぎていても、別の場所がちょうど入っている。桜ほど脆くなく、直前の調整にも耐えます。
天気の安定も違います。日本の10月と11月は晴れて乾いた日が続くことが多く、写真がよく写り、一日歩いても快適な条件がそろいます。11月の光、とくに京都の寺の庭に差す光には、ほかの季節では見つけにくい質があります。
人出は相当なものです。紅葉の盛りの京都は、実際に混みます。ただ季節が長いぶん、桜の狭い見頃より人が分散します。旅館は春より取りやすく、飲食店も競争はありますが極端ではありません。融通を必要とし、日程を固められるのが苦手な旅行者には、秋のほうが落ち着いて組める季節です。
比べてみる
上質な旅の場合
市場の上のほうで旅をするなら、計算は少し変わります。どちらの季節も料金は高く、予約の競争も激しいのですが、難しさの性質が違います。
春の制約は、まず時期です。箱根、京都、日本アルプスなど、桜の名所に近い最上級の旅館は、開花の予想が確定するより何か月も前に埋まります。例年の開花の幅を知り、宿と関係を持っている専門家なら、日付が定まる前に部屋を押さえられます。開花の確定を待ってから動く旅行者は、良い選択肢がすでに無いことに気づきます。
秋の制約は、時期よりも、入れるかどうかです。京都でもっとも人気のある寺院の貸切拝観、清水寺や永観堂の夜間拝観、赤い楓の下の苔庭での茶の湯。こうしたものには事前の手配が要り、場合によっては寺の側との既存の関係が要ります。景色そのものは誰にでも開かれています。その景色を特別なかたちで味わうほうに、丁寧な組み立てが要るということです。
「桜は、早く計画して不確かさを受け入れる人に報います。秋は、どこを見ればよいかを知り、入る手立てを持つ人に報います。どちらも経験する価値があり、できれば別々の旅で。」
正直なところ
桜を選ぶなら: 満開の眺めそのものが第一の目的で、日付が確定しないまま数か月前にすべてを押さえることを受け入れられ、人の多さも含めていちばん象徴的な日本を見たい場合です。
紅葉を選ぶなら: 天気の安定を大事にし、日程を固められるのが苦手で、旅程に余地を残したく、色そのものと同じくらい、寺の庭や茶の湯や伝統工芸といった日本の文化の厚みに関心がある場合です。
初めての来日で二つのあいだで迷っているなら、秋のほうが確かな体験になります。天気に恵まれる見込みが高く、予定を動かしやすく、写真映えするだけでない、良い日本の旅を決める体験に手が届きやすくなります。